きっかけはちょっとした好奇心だったのだけれど、観察を始めるとこれがなかなか面白い。ただ、学校の廊下を女王アリが歩いていたのを捕まえたところからスタートしたんだよなぁ。小さな生き物なのに、社会があり、役割があり、巣の中では驚くほど秩序だった生活が営まれていた。


最初に使っていたのは、定番の石膏の巣だった。
石膏は水を含むので湿度が安定し、アリたちも落ち着いて暮らしている様子だった。ところが、あるときふと思った。
「透明な巣にしたら、もっと観察しやすいのでは?」
そこで、アクリルを加工して巣を作ってみた。
中がよく見えて、観察には理想的。これは良い改良になるのではないかと思ったのだが……結果は予想外だった。まさかのコロニー全滅。
正直、かなりショックだった。
ただ、冷静に考えてみると、原因らしきものはいくつか思い当たる。
石膏は水を吸うので、巣の中の湿度が自然に安定する。
しかしアクリルは水を吸わない。つまり、巣の環境が急に乾燥した可能性がある。アリにとって湿度はかなり重要な条件らしい。
「巣の素材が変わるだけで、生き物の環境はこんなに変わるのか」
理科の教員としては、むしろ興味が湧いてきた。
そこで今シーズンの女王アリ出現シーズンに備えて、3Dプリンタで作った巣の準備です。素材はPLA(ポリ乳酸)。
最近の3Dプリンタではよく使われる素材で、とうもろこし由来のプラスチックだ。加工もしやすく、形も自由に作れる。ただし、前回の失敗を踏まえて一つ工夫をした。

試験管を組み合わせること。
試験管に水を入れ、綿で栓をする。
これはアリ飼育ではよく使われる方法で、
・水分供給
・湿度の維持
・安定した小さな空間
を同時に作ることができる。
つまり
石膏巣(そこそこ順調)
↓
アクリル巣(失敗)
↓
PLA巣+試験管
という、ちょっとした「人工巣の実験」になっている。
こうしてみると、アリの飼育は単なるペットというより、環境条件の実験のようでもある。
湿度はどうか。
巣の広さは適切か。
素材によって何が変わるのか。
小さなコロニーを見ていると、生物にとっての「住環境」というものがどれほど大切かがよくわかる。
さて、今回作った3Dプリンタの巣。
思ったように機能してくれるのか、それともまた別の問題が起きるのか。
早く観察したいところだけれど、・・・全滅したので女王アリの発生を待つしかないんだよな。
小さなアリの巣だが、なかなか奥の深い研究テーマになってきた。
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