つぶやき 実験 観察 教材

紙一枚から始まる探究

探究理論編の授業で「今日は特別な準備はありません」と伝えると、生徒は少し不思議そうな顔をします。

机の上にあるのは、ただの紙だけ。実験器具も、薬品もありません。けれど、この「どこにでもある素材」こそが、思考を動かす入り口になることを、最近ますます感じています。

最初に取り組んだのはペーパータワーです。紙だけを使って、できるだけ高い塔を作るというシンプルな課題。はじめはゲームのような雰囲気で、「とにかく高くしたい」と細く積み上げていくグループもあれば、勢いよく重ねていくグループもあります。ところがある高さを超えたあたりから、塔はすぐに崩れ始めます。そこで生徒たちは自然と考え始めます。「底を広くした方がいいのでは」「三角にすると強そう」「紙を巻くと固くなるかもしれない」。活動はいつの間にか、形や構造を探る時間へと変わっていきました。
「遊びは、ある瞬間から設計に変わる。」というのを自分たち自身も感じるところです。他のクラスの結果を気にしたりなので本当に面白かったです。

続いて行ったのは、「どうやったら紙をゆっくりしかも真っすぐ落とせるか」という課題。同じ紙でも、丸めるのか、広げるのか、羽のような形にするのかで落ち方はまったく違います。ひらひらと舞うもの、くるくると回転しながら落ちるもの、意外なほどまっすぐ落ちるもの。何度も落としては形を変えるうちに、「空気が関係しているのではないか」という声が出てきます。普段は意識することのない空気が、ここでははっきりと動きを左右している。見えない存在が、現象として立ち上がってくる瞬間でした。
見えないものは、感じたときに初めて存在になる。ということです。この時にはセロハンテープしか使えませんでしたので、普通に形だけまねてパラシュートにすると、ひっくり返るんです。重たいですからね・・・紙は意外と。そのまま時間が無くなって諦めるチームもありますが、色々工夫していて面白かったです。

教室内で予選をやって、上位6チームが玄関上(ほぼ二階から・・)から落下させられるのですが、自分たちもここからやりたかったって悔しがるんで面白いですね。

いざそこでやってみると、条件にしていた「できるだけ真っ直ぐ落ちる」にする意味が出ていきます。手を離してすぐ壁があるんで、ひらひらすると壁にぶつかって体制が崩れてしまい思ったように落ちていかないのです。

当初の「ゆっくり」「まっすぐ」が効いてくるんですよね。そこも悔しがってますから可愛いですよw

最後は紙で独楽を作り。授業なので、先にキーワード。「角運動量保存の法則」とか「偏心」とか「歳差運動とか」。しっかり考えて作らないと、すぐに倒れてしまったり、軸がぶれてふらついたりします。

しかし何度も試すうちに、「真ん中に重さがあった方がいい」「左右対称にした方が安定する」といった発見が自然と生まれてきます。回転しているときに倒れにくくなる感覚は、言葉で説明するよりも、手の中の体験として強く残ります。生徒たちは少しずつ形を整え、より長く回る独楽を目指して工夫を重ねていました。ただ、「既成の独楽」の形を紙で再現しようとする子は本当に苦労します。なかなかあのシルエットを紙で立体的に作るのは難しいですからね。積層すればできるんですがw
ここでは「理解は、頭ではなく指先から始まることがある。」ということですね

こうして振り返ってみると、三つの活動には共通点があります。それはどれも、現象から始まっているということです。高くしたい、ゆっくり落としたい、長く回したい。単純な目標に向かって手を動かす中で、力のかかり方や空気の存在、回転の安定といった科学的な見方が少しずつ立ち上がってきます。

知識を先に与えるのではなく、体験の中から必要な視点が生まれてくる。その過程そのものが、学びなのだと改めて感じました。
問いは与えられるものではなく、動いたあとに生まれる。

特別な実験装置や高価な教材がなくても、探究は起こります。むしろ、身近な素材だからこそ、生徒は自由に試し、失敗し、また挑戦することができます。紙はすぐに折れ、すぐにやり直せる素材です。その軽さや扱いやすさが、思考のハードルも下げてくれるように思います。教室にあるもので科学は始められる。その当たり前のことを、あらためて実感した時間でした。

だってこれ全部の理屈を説明して「さあやってみよう」ならただの工作教室なんですよ、どれも。そして手先の器用な生徒の勝ちに決まってしまうんです。それじゃあね。

ある先生に「あんたはどこにいても楽しめるから良いよね」といわれました。そうなんです、どこにいても楽しめちゃうんです。そして実際ずっと楽しかったんです。授業をやっているときには。んーーーここまでくると後悔の念が生じますよね・・・何かにとらわれすぎたかもなって。でも、他にも沢山あるからねぇ、トリガーは。次に活かして頑張るしかない。

「もっと一緒に色々なことしたかったのに・・・」と沢山いってもらえてそれを背負って次でまた頑張ります。まあ、そういってもらえているうちが花でもあるので、「早く辞めろや」っていわれる前で良かったという理解でw

ちなみにこの三時間で使ったのはA4コピー用紙が8枚、爪楊枝、色画用紙一人A5を1枚、セロハンテープだけなんでコスパ最高です。何ならこれだけで6時間、理屈も含めたらきっと20時間くらい使えますよね。

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