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T2 Phageをつくる

3Dプリンタを導入しました。とにかく製造国の技術革新に脱帽です。さすが2022年にTHE BEST INVENTIONS OF 2022に選出しただけがあるなという感じ。個人向けのプリンタですが、とにかく精度と速度が抜群なんですよね。

あとはユーザーがどのようなものをどのような素材で利用するのかがセンスを問われる話だろうなと実感します。

最近何個か作り出したのがこれです。T2ファージ。

まるでアポロの月着陸船みたいな形状ですよね。Macの画面に映っているのがSEM画像に着色したものですね。

T2ファージは「ミクロのエイリアン」と形容されるほどユニークな形状をしているンです、実際に。頭部は20の三角形からなる正二十面体で、遺伝物質であるDNAを格納するタンパク質の殻で構成されています。この構造は効率的な遺伝子の収納と保護を可能にしています。

尾部は伸縮可能なチューブ状で、先端には宿主細胞に接着するための6本の繊維が放射状に広がっています。この尾部は注射器のように機能し、DNAを細菌内に注入する役割を担っています。

ウィルスは生物ではありませんが効率的な自己複製をしています。まるで工場です。T2ファージは溶菌サイクルを採用していて、宿主細胞内で20分で約200個の子ファージを生成するんです。大腸菌の代謝機構をハイジャックし、自らのDNA複製とタンパク質合成をし、最終的にリゾチーム酵素で細胞壁を分解し、子ファージを放出します。怖い・・・。

このファージの研究は分子生物学の基礎を築く画期的な成果をうみだしました。ヒトには影響がほとんど無いので、研究対象としては有利です。

T2ファージの研究は現在、抗菌薬耐性問題の解決に貢献しています。

• 特定細菌のみを攻撃するため、人体への影響が少ない

• 食品分野ではO157やサルモネラ菌の除菌に実用化

• ゲノム編集技術との組み合わせで、より精密な治療法開発が進行中

T2ファージはその特異な形状と効率的な感染メカニズムから、生物学の教科書で必ず登場する「モデル生物」です。ウイルスながら、生命の本質を解き明かす鍵として、現在も研究が続けられています。

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