先日、ふと庭先でひらひらと舞う白いチョウに目を奪われました。羽根の縁がほのかに黒く、何より印象的だったのは、その翅がまるで和紙のように薄く透けていたこと。光を透かすと、まるで精巧な工芸品。これは「エゾシロチョウ」――北海道などでよく見られるチョウのひとつ。

あまりの美しさにしばらく見とれてしまい、「ぜひ羽化の瞬間も見てみたい」と思ったのが数日前のこと。ちょうど壁の一角に、緑がかったサナギがついているのを見つけて、これはチャンスと観察を始めました。
…が、うまくいかないものです。羽化に立ち会おうとタイミングを見計らっていたつもりだったのに、どうもこのサナギは死んでいるようで、どんどん軽くなってしまい、最後はもうサナギの抜け殻風、スッカスカです。

「まあ、自然のタイミングには勝てないよね」と自分をなだめつつ、その後、裏のサクラの木に目をやると……愕然としました。
びっしり。まさにその言葉しか出てこないほど、葉の上に、下に、枝の分かれ目に、緑色のモコモコとした幼虫たち。まるで毛糸くずをばら撒いたかのように、びっしりと。
「うわ……これ、全部エゾシロチョウの幼虫か……」
自然好きとして、多少の虫には寛容でいたいとは思っていますが、正直これは「不快害虫」と言われるのも納得。毒こそないものの、見るだけでぞわぞわします。そして何より、葉の減りが尋常ではない。このまま放っておけば、サクラの木が丸裸にされてしまいそうな勢い。

成虫はあんなに儚げで美しいのに、その子どもたちはまるで別の生き物のよう。自然界の「美しさ」と「厳しさ」は、しばしば表裏一体。あの透ける翅に感動した記憶が、ほんの数日でこんなにも複雑な思いに変わるとは。
今後、どう付き合っていくかは難しいところですが、ひとまず木の健康を守るため、何らかの対処を考えざるを得ないかもしれません。取り敢えず現時点では何も行われていませんでした。
ところがこちらの「ドクガ」の幼虫は有害である事もあって、徹底的に駆除されています。なんとも難しい話です・・・
自然は美しく、そして過酷。そんな当たり前のことを、エゾシロチョウがあらためて教えてくれた気がします。

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