SSHの課題研究で「推進技術」に取り組んでいる高校2年生がいます。パルスジェットエンジンとイオンエンジンを「搭載」したいという強者です。できれば自分の自転車にということで、既に自転車には様々な改造を施してあるということです。たとえば電源チャージ用のバッテリーなどが搭載済みということなのです。
さしあたっての研究テーマは、パルスジェットエンジン。あの「ボンッボンッ」と爆発的に音を立てながら燃焼するやつです。
そんな彼は兵器マニアでネットでV-1飛行爆弾をみてパルスジェットエンジンにハマったようです。なんと超シンプルなパルスジェットエンジンだったんです。
「こんな構造で飛ぶの?」「タービンもコンプレッサーもないってどういうこと?」
そこから好奇心が爆発。どうしても自分の手で作ってみたい!と思ったのが始まりということです。
自分も調べてみると
【主な特徴】
- 全長:約8m / 翼幅:約5.4m / 重量:約2.1t
- 弾頭:約850kgの高性能炸薬
- 最高速度:約640km/h
- 航続距離:約250〜300km
- 誘導方式:ジャイロスコープによる簡易な自動操縦
⠀【推進装置】
- パルスジェットエンジン
- アルグス社製「As 014」
- バルブ付きのパルスジェットで、上部に特徴的な「筒」が突き出している
- 空気と燃料を断続的に燃焼させ、1秒間に50回以上の爆発を起こして推進
こんなデータはもう「工作マニア」のスイッチを全面的に入れてくれるんです。
最初に作ったのは、カートリッジガスボンベを切って燃料を入れたもの。燃料は簡単に手に入るガスボンベ(ブタン)、点火はBBQ用のバーナーでトライ。
ところが……
火はつくけど、「ボンッ」で終わり。連続燃焼しない。しかも爆音が出る前に火が消える。おまけに盛大に炎が上がって大騒ぎに発展・・・って炎は50cm位だったのですがね。しかも屋外で実施していたらしいのですが。簡単に言えば「ブタンが開放系で燃焼した」に近い現象ですが、まあ何かあったら問題なので貴重な失敗と捉えます。つまり「燃料の供給」「吸気」「共鳴」全部がバラバラなのです。
そこで燃料を「液体」に変更します。「実際に搭載するのは大変」とか「燃料供給を大気圧に頼っているのは解せない」などいろいろな事を言ってはいましたが、ベルヌーイの定理由来のスプレーの原理を応用した「燃料と空気」の同時供給装置をつくりました。自転車の空気入れ部品などの転用です。
送風機の吹き出し口をどんどん狭めていって「吹き出し孔」といっても良いくらいまでにしてその空気の圧力で液体のアルコール燃料を吸い上げるのです。
教室内で燃料を「水」にしたり「粘度の低くなるアルコール」にしたり工夫してどう考えても安定供給できるという確証を持っていよいよ屋外実験でリベンジ。

ボンッボンッボンッ……!と明らかに周期的な燃焼が始まりました!

次のステップはただ火をつけるだけじゃなく、科学的にしくみを解き明かすこと。
- 燃焼周波数と共鳴管の長さの関係
- 炎の温度や流速の測定
- スモーク流で空気の動きを可視化
- 最終的には、推力の定量測定
パルスジェットエンジンは、シンプルだけど奥が深い。
炎が出るだけじゃなく、その背後には物理、化学、空力、音響、工学などいろんな分野がつながっています。あ、見た目がまだ良くないので最終的には「美術」にもですね。
ということで、次の改良改善に弾みがつきそうです!

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